なぜ日本でPRO(Patient Recruiting Optimization)が発達しないのか?

日本の治験におけるPRO(Patient Recruiting Optimization)は、ボランティア会という被験者プール形式をとることが多い。

海外だと、文字通り「被験者リクルーティング」を丸ごと受託する。

 

この形態である限り、PROの利用が進むことはないのではないかと思う。

なぜなら、下記の2パターン(ものすごく簡略化している)のそれぞれで、製薬会社がPROを使おうという気持ちにならないからだ。

  • 重点的に開発したい薬の場合
    「最短で開発を終わらせる」ことが求められる。
    早く終わらせて市場に出したいので、「確実に早く」組入れができるのであれば、どれだけお金を使ってでもサービスを使うだろう。
    (なお、1カ月薬が早くでることは、数十億円規模の売上インパクトがある)

  • それ以外の薬の場合
    「決められたスケジュールで、決められた予算で開発する」ことが求められる。必要以上に治験実施医療機関を追加したり、サービスを利用したりはしないだろう。当初決めた医療機関で満了させようとする。(PROを使うとしたら、コストをかけて終わらせた方がよい状況になったときだろう)

 

日本のPROは、プールの被験者候補の適格性は検査してみないと分からず、しかし紹介・組入れによるお金は発生する。

つまり、「組入れになるかどうか分からないが、金はかかる」仕組みなのである。

なので、2つのパターンどちらにも引っかからない「なんとなくよさそうだが、ほしがられない」サービスになっているのではないだろうか。

 

使われるとしたら、

  • 本当に切羽詰まったとき
  • 通院していない人が対象のとき(啓発が必要なとき)

だろう。

事実、PROの実施状況を見てみると、上記の状況が当てはまってる気がする。

 

  • 疾患レジストリレベルで、個々の患者のリアルタイムの情報を入手する
  • まったく製薬会社がお金をかけずに、患者が応募する仕組みを作る

あたりが対応策になるかと思うが、前者は国が進めており、後者はビジネスにならない。

 

なぜ海外で成り立つのかというと、PROを使った方が結果として早く組入れられるからだろう。

 

海外では保険制度や高額療養費制度などの違いもあり、被験者に医療費の負担減というインセンティブが発生しやすい。つまり日本よりも誘引しやすい環境にある。被験者が集まりにくいような試験でも、自発的に参加したいというインセンティブが働く。

また、CRCの派遣まで行うため(アメリカにはSMOがない)、被験者リクルーティングをOptimizeできるのである。

 

日本の治験の今までの流れもあるが、このまま被験者プール形式をとっても日本のPROが成長することはなかなか難しいのではないか。